シロアリ駆除はDIYで行うことも可能です。

DIY(Do it yourself、自分でやってみる)とは、本来は専門業者の力を借りなければ完成できない作業を、ホームセンターで売っている商品などだけを使って自力でなし遂げる取り組みです。

シロアリ駆除業者に頼むと費用が高くなると感じている方が、DIY駆除を行うことが多いようです。シロアリ駆除製品は、たくさん市販されています。
そこで、DIYでシロアリ駆除をしたときの費用と、駆除業者を依頼したときの費用を比べてみましょう。

ただシロアリ駆除は「床下という危険な場所」で作業するので、DIY駆除を行う方はぜひ、

  • シロアリ駆除の基本的な知識
  • DIY駆除は危険がいっぱい
  • 失敗事例

の章もしっかり読み込んでください。

DIY駆除の費用

シロアリ駆除の基本は、薬剤を散布することです。これはDIY駆除でも業者駆除でも同じです。よってDIY駆除をする方は、薬剤を購入して自分でまくことになります。

何が必要?

DIYシロアリ駆除に必要なものは、以下の通りです。

  • 木材に塗る「木部処理」の薬剤
  • 土に散布する「土壌処理」の薬剤
  • 毒餌を使う「ベイト工法」のツール
  • 体を守る装備の費用

1つずつ見ていきます。

木材に塗る「木部処理」の薬剤の費用

シロアリは住宅の柱などの木材を食べるので、薬剤を木材に塗り付ける必要があります。この駆除方法を「木部処理」といいます。

木材に塗るタイプ

シロアリ駆除用の薬剤に「白アリミケブロック」があります。1本400mlで、これを50倍に水で薄めて使うので、20リットルの薬剤を用意できます。500mlのペットボトル40本分ですので、かなりの量になります。「白アリミケブロック」は日本シロアリ対策協会の認定薬剤です。

白アリミケブロック」は通販で7,344円で売っています。

白アリミケブロックを通販で見る

ただ「白アリミケブロック」は液体なので、これを木材に塗り付ける刷毛(はけ)が別途必要になります。

水性アリシス」は水に薄めず使うことができます。15リットルで8,027円なので、白アリミケブロックよりは少し高めです。

白水性アリシスを通販で見る

スプレータイプ

20リットルもの液体を刷毛で塗る作業は大変という方には、スプレータイプの木部処理用の薬剤があります。

ネオアリゾール」1本300ml、864円

ネオアリゾールを通販で見る

エバーウッドS-400」1本420ml、1,080円

エバーウッドS-400を通販で見る

スプレータイプは木材に向かってスプレーを吹き付けるだけでいいので使い勝手がいいのですが、値段は高くなります。
「ネオアリゾール」を20リットル分買おうとすると50本必要になり、4万円以上の出費になります。

土に散布する「土壌処理」の薬剤の費用

シロアリ駆除では、シロアリが巣をつくっている地面に直接薬剤をまく方法もあります。これを「土壌処理」といいます。

粒タイプの薬剤をまくだけ

粒状ネオターマイトキラー」は粒状の薬剤を「ふりかけ」のようにまくだけです。
1袋(5㎏)で3,995円です。

粒状ネオターマイトキラーを通販で見る

液体を散布するタイプ

土壌用ジノテクト」は液体です。粒タイプより散布に手間がかかりますが、土の中に染み込むので効果が期待できます。
3.2リットルで9,671円です。

土壌用ジノテクトを通販で見る

毒餌を使う「ベイト工法」の費用

ベイト工法のベイトとは「餌」という意味です。ベイト工法は薬剤を塗ったりまいたりするのではなく、シロアリに毒餌を食べさせて殺す手法です。

ベイトの正式名称は「脱皮阻害剤」といい、シロアリの成長に欠かせない脱皮を防ぐ薬です。つまり、シロアリがベイトを食べたからといってただちに死ぬわけではありません。ベイトを食べたシロアリが巣に帰ると仲間のシロアリにも伝染し、巣ごと死滅するというわけです。
ベイト工法では、ベイトを特殊なプラスチック容器に入れ、容器の上部だけを出して土の中に埋めます。

エクステラステーション」は1セット(容器15個入り)で39,312円です。15個の容器を土の中に埋めて、30~40坪をカバーします。

エクステラステーション

体を守る装備の費用

シロアリ駆除は床下作業をします。また作業者が薬剤を吸わないようにしなければなりません。そこで、以下の用品も用意したほうがいいでしょう。

  • ツナギの作業着、4,000円くらい
  • 防毒マスクと防護メガネのセット、2,000円くらい
  • ゴム手袋、300円くらい

DIY駆除を成功させるコツ

木部処理用の薬剤も、土壌処理用の薬剤も決して安い価格ではありません。これらを住宅の床下すべてにまこうとすると簡単に駆除業者の費用を超えてしまいます。

そこで効率的にピンポイントで薬剤を散布する必要があります。そのためには、シロアリの巣とシロアリ被害を受けている場所を特定しなければなりません。
その方法は「シロアリ駆除の基本的な知識」の章で解説しています。

【費用対決】DIY vs 駆除業者

それではいよいよ、DIY駆除と業者駆除の費用を比べてみましょう。
ただ、使用する薬剤の種類や住宅の面積、被害状況によって大幅に変動します。ここで紹介する計算は、目安にすぎません。
ただそれでも「DIYは安い」ということは確かな用です。

DIY駆除は約7万円

DIYシロアリ駆除の費用は、およそ7万円です。
7万円の内訳は次の通りです。

  • 木部処理:木材に塗る薬剤1本7,344円×2本=14,688円
  • 土壌処理:粒状タイプ1袋3,995円×2袋=7,990円
  • ベイト工法:1セット39,312円×1セット=39,312円
  • 体を守る装備:ツナギ作業着、防毒マスク、防護メガネ、ゴム手袋=6,300円

者駆除は10.5万~25万円

駆除業者の費用は、本当にまちまちです。ここでは坪5,000円の業者と坪3,500円の業者で試算してみました。駆除面積は30坪と50坪を設定しました。

  • 駆除する面積が50坪で坪5,000円の業者に発注すると25万円
  • 駆除する面積が30坪で坪5,000円の業者に発注すると15万円
  • 駆除する面積が50坪で坪3,500円の業者に発注すると17万5千円
  • 駆除する面積が30坪で坪3,500円の業者に発注すると10万5千円

良心的な業者であればDIYより「お得」

DIY駆除のほうが安いのですが、しかし上記のDIYシロアリ駆除には、作業者(家主)の労賃は含まれていません。
さらに、駆除の確実性や作業危険のリスクなどを考えると、シロアリ駆除は良心的な費用を提示している業者に任せたほうが「お得」といえると思います。

シロアリ駆除の基本的な知識

いくらDIY駆除のほうが安いといっても、闇雲に薬剤をまいたり失敗を繰り返していれば、そのうち「業者に頼んでいたほうが安かった」ということになります。
そこでDIY駆除では、シロアリ駆除の基本的な知識を持ち、戦略的に展開していく必要があります。

予防と駆除は違う

シロアリ駆除には、駆除と予防があります。駆除は実際に被害が出ている場所に薬剤をまくことです。予防には、被害がまったく出ていないうちに行う予防と、被害範囲を広げないための予防の2種類があります。
薬剤は、駆除用と予防用を兼ねたものと、駆除用のもの、予防用のものがあります。

シロアリ被害が発生しやすい場所は、風呂場、トイレ、玄関、キッチンなどの床下です。
例えば風呂場に被害が起きたら、風呂場の床下に駆除用の薬剤をまき、風呂場に近いキッチンの床下に予防用の薬剤をまく、といった戦略が必要になってきます。

蟻道(ぎどう)とは

シロアリの被害に遭っている場所とシロアリの巣を見つけるには、まずは「蟻道(ぎどう)」を探す必要があります。

蟻道は文字通り、シロアリが通る道です。シロアリは日光や風を嫌うので、土や糞などで自分たちが通る道にトンネルをつくるのです。そのトンネルを通って「出勤」するというわけです。このトンネルが蟻道です。

ただ蟻道はシロアリがつくっているものなので、巣と餌場を完璧につないでいるわけではありません。蟻道がある場所や蟻道の形状から、シロアリの行動範囲を想像する必要があります。
そして行動範囲と推測した部分に薬剤を散布したり、ベイト工法の容器を設置したりすることになります。

シロアリの生命力はそれほど高くないので、うまくいけば駆除の成功率は高いといわれています。

DIY駆除は危険がいっぱい

シロアリ駆除は、

  • 人が入ることを想定していない床下で行う
  • 毒である薬剤を使う

という点で、危険が伴います。それぞれの注意点を紹介します。

床下は人が入ることを想定していない

床下に入って作業をするときは、次の点に注意してください。

  • 1人では行わない。必ず2人以上で行い、1人は万が一に備えて床下に入らず家の中で待機する。
  • 床下で身動き取れなくなったときにパニックを引き起こさないようにする。冷静に救助を待つ。
  • 多めのライトを使って床下に入る。床下には配線、配管、釘などの障害物が多く存在するのでそれらが確認できないと危ない。
  • 床下から脱出できなくなったら迷わず消防を呼ぶ。

増築している家では、床下が「仕切り」のような状態になっていることもあります。その場合、それより先は進めないので、一度床下から出て、さらに別の出入り口から増築部分の床下にもぐることになります。

さらに、増築部分に、床下に入る出入口が設置されていないこともあります。その場合、新たに出入口をつくらなければなりませんが、ここまでくるとさすがにDIYが得意な方でも業者に頼んだ方が無難でしょう。

薬剤を吸わない装備が必要

シロアリを殺す薬剤が、人体に良いわけがありません。DIY駆除をするときは、防毒マスクや防護メガネを装着して薬剤を吸わないようにしてください。

また、薬剤は日本しろあり対策協会が認定する製品を選んでください。同協会は、シロアリ駆除の効果がありながら人体への影響を最小限にした薬剤を認定しています。

DIY駆除の失敗事例

DIYシロアリ駆除の失敗例をいくつか紹介します。

殺虫剤はNG

普通のクロアリやダンゴムシ、ワラジムシ向けの殺虫剤は、シロアリ駆除に使わないでください。そのような殺虫剤ではシロアリを効果的に殺すことはできません。
また、シロアリはとても用心深いので、殺虫剤をまかれるとその場所から別の場所へと移動してしまいます。それは被害の拡大を促しているようなものです。

甚大な被害ではベイト工法だけでは効果が出ない

シロアリに毒餌(ベイト)を食べさせるベイト工法は、効果が出るまでに時間がかかる遅効性(ちこうせい)の手法です。
よって、大きな被害が出ている場合、ベイト工法だけでは対処しきれません。薬剤塗布がメーン、ベイト工法は予備的、と考えておきましょう。

本当は穿孔処理をしたいところ

シロアリは賢いので、まずは木材の内部から侵食していきます。表面上はなんの異変もない木材の内部が、シロアリにやられていることは珍しくありません。

木材処理の工法の1つに、穿孔(せんこう)があります。穿孔とは「穴を開ける」という意味です。木材に電動ドリルで細い穴を開け、その穴に薬剤を注入します。
家の強度を支えている木材ですので、無暗に電動ドリルで穴を開けることはできませんので、これもDIYではおすすめできません。

そうなるとDIY駆除では木材の表面に薬剤を塗りつけることしかできませんが、それでは木材の中のシロアリには届きません。

シロアリにばれてしまうこともある

シロアリは食べながら移動を続ける修正があります。やっと被害場所を特定できたとしても、もうシロアリはやってこないかもしれないのです。そこに薬剤をまいても無駄です。

さらに、まさにシロアリが被害をつくっている現場を見つけられても、一発で仕留めることができなければ、危険を察知したシロアリは別の場所に移動してしまいます。シロアリ駆除は、シロアリにばれないように慎重に行う必要があるのです。

まとめ~普段から高度なDIYを行っている人には向いていますが…

DIYによるシロアリ駆除は、高いスキルが必要であることがご理解いただけたと思います。普段からホームセンターに通い、高度なDIYに取り組んでいる方であれば費用を抑えられるDIY駆除をおすすめできますが、そうでない方は、最初からシロアリ駆除業者を依頼したほうがいいでしょう。