シロアリ駆除を業者に発注する前に、家主が必ず身につけておかなければならないスキルがあります。
それは見積書を読み解く力です。
見積書とは、「今回のシロアリ駆除は、これだけの経費がかかるので、これだけの費用を請求します」という内容を記した文書のことです。
シロアリ駆除は「総額費用が安ければよい」とはなりにくい買い物なのです。だからといって、高い費用を請求する業者が良い業者とも限りません。
見積書を読めるようになると、「安かろう悪かろう」の業者と「高かろう悪かろう」の業者を見抜くことができます。
良い見積書には、最適の駆除方法と適正価格が記載されているのです。
こんな見積書を出す業者は駄目業者
業者から出てきた見積書は、じっくり目を通してください。なぜなら見積書の内容によって、駄目業者を見抜くことができるからです。
内容が詳しい見積書は「◎」、難解なだけは「△」
「詳細な見積書を出されても、何が書いてあるのか分からない」と心配になる方は少なくないと思います。
しかし、詳細な内容を記している見積書は良い見積書といえます。
しかし、シロアリ駆除に関する知識がない家主が解読できない見積書を出す業者は、親切とはいえません。詳しい見積書は「◎」、難解なだけの見積書は「△」と覚えておいてください。
薬剤名や駆除方法の正式名称をそのまま見積書に掲載するのは仕方がないでしょう。
優良業者は、次のことを心がけています。
- 今回使おうとしている薬剤のグレードの説明
- この薬剤の価格は高いほうなのか安いほうなのかの説明
- この薬剤を選択した意図
こうした内容を、薬剤のパンフレットなどの資料を使って説明するか、少なくとも口頭で解説してくれる業者は、ひとまず安心できます。
シロアリ駆除方法(施工内容)についても、同様の説明があってしかるべきです。
このような配慮がなく、単に専門用語が並んだだけの見積書を出す業者は「△」をつけたほうがいいでしょう。
見積書が超シンプルな業者は「×」業者
一方、見積書の内容がシンプルすぎる業者は、駄目業者の可能性がさらに高くなるでしょう。
見積書に「薬剤費用」「作業賃」としか書かれていないと、駆除が終わった後の住宅に不具合が生じたときに、何が原因だったのかが分かりません。
これでは、本当に薬剤を散布しているのかも分かりませんし、そもそも本当に駆除を行ったのかも不明です。
確かにシロアリ駆除業界には「作業の細かい説明をするのは苦手。だけど駆除はしっかりやる」という職人気質の社長もいます。しかしそのようなビジネススタイルは、コンプライアンスや企業倫理が問われるいま、古いと言わざるを得ません。
ビジネススタイルが古い業者は、最新のシロアリ駆除工法を取り入れているのか不安になります。
見積書の読み方
シロアリ駆除の見積書の読み方は、それほど難しくはありません。良い業者の良い見積書は、一見すると情報量が多く複雑に見えますが、「なぜこの項目が書かれているのか」が分かるものです。
被害を受けた場所と面積は書かれてあるか
良い見積書には、住宅の被害箇所が書かれてあります。しかも「浴室」と「脱衣所」を分けて表示する業者もあります。さらに建物が木造なのか鉄筋コンクリートなのかといったところまで書き込むこともあります。
そして、駆除作業をする面積の表示は、見積書には必須項目です。
悪徳業者は駆除範囲を「床下全体」としたがります。なぜならシロアリ駆除の費用が、坪単価で表示することが一般的だからです。駆除範囲が広いほど儲けが出るので、床下全体を駆除したがるのです。
「駆除範囲は床下全体」と回答した業者には注意してください。
除湿対策は別項目になっているか
シロアリ駆除には、駆除と予防のほか、除湿対策も必要になる場合があります。シロアリは湿った場所を好むので、駆除に成功しても湿気が取れていないと再発する可能性が高くなります。
それだけに業者としては、除湿対策は追加させやすい工事です。ある業者から除湿対策が必要と言われた場合、別の業者に除湿対策が必要かどうか尋ねてください。
また除湿対策は、設置する換気扇の数や散布する調湿剤の量によって、費用はすぐに跳ね上がります。これも複数業者の見解を確認する必要があります。
良心的な見積書では、除湿対策の記述内容が細かく記されています。そのような見積書を受け取れば、「換気扇の個数を減らした場合」や「除湿対策をすべて行わない場合」の費用も分かります。
「当社の工法は薬剤散布と除湿対策がセットになっています」と言い、有無を言わさず除湿対策を押しつけようとする業者には注意してください。
薬剤名は書かれてあるか
見積書の薬剤名はとても重要な情報です。日本しろあり対策協会の認定を受けていない薬剤の場合、人体への影響が懸念されます。
- 見積書に薬剤名が書かれていない
- 薬剤名を尋ねたら嫌な顔をされた
この2つに当てはまる業者は「△」を通り越して「×」がつきます。「素人に薬剤の説明をしても仕方がない」という態度が現れていて、それはその業者の体質と言っても過言ではありません。
駆除方法は書かれてあるか
多くの業者は、見積書に坪単価を表示するでしょう。しかし中には、平方メートル単価で計算している業者もいます。
複数社から見積書を取ったときに、単価の単位がばらばらでは比較しづらいので、単位をそろえた見積書を再度提出してもらいましょう。
面積をより正確に表示できる平方メートル単位にそろえてもらったほうがいいでしょう。
家主が複数の業者の話を聞いた後に、「うちには除湿工事は要らない」「ベイトの数を減らす」「穿孔工法にしてもらう」と判断したら、すべての業者にこの条件に合致した見積書をつくってもらいましょう。
業者によっては、工事の内容によって割引率を変えるところもあるからです。
営業担当者によっては再見積もりを嫌がりますが、その場合はご辞退いただいたほうがいいでしょう。
なぜ保証期間が大切なのか
同じ工法、同じ薬剤、同じ作業面積、そして同じ費用の見積書を出した業者が2社あったとします。その場合は、保証の有無と保証期間の長さで業者を選んでください。
保証とは、シロアリが再発したときに無償で再駆除を行うこと
シロアリ駆除における保証内容は、主に次の2つです。
- 保証期間内にシロアリ被害が再発したら無償で再駆除を行う
- 駆除後のシロアリ被害によって生じた住宅などの損失を補償する
自信がない業者は保証をつけない。優良業者は5年保証をつける
シロアリ駆除に自信がない業者は保証をつけませんので、保証をつけない業者はいくら費用が安くても避けたほうが無難です。
一方、保証期間は1年、3年、5年などがあります。長ければ長いほど優秀な業者と考えて間違いないでしょう。
保証は口約束では駄目。見積書に書いてもらおう
営業担当者が「3年保証です」と言っているのに、見積書にその内容が書かれていない場合、「保証がつくことを見積書に記入してください」と頼んでください。
そして、保証する条件を詳しく書いてあるパンフレットなどももらっておいてください。駆除後にシロアリが再発生していることは明白なのに、さまざまな理由をつけて「これは保証内容に含まれない」と主張する業者もゼロではないからです。
なぜ施工内容が大切なのか
シロアリ駆除の見積書では、駆除方法つまり施工内容を確認することが大切ですが、家主によっては「シロアリ駆除の専門ではない自分が、駆除方法を選択して大丈夫なのか」と感じるかもしれません。
もしくは「自分が選んだ駆除方法が間違っていたからシロアリが再発した、といったことは起きないのか」という不安もあるでしょう。
しかし安心してください。誰でもよりよい施工内容を選択できます。
それは「多数決」を取ることです。
家主が施工内容を選択できる形式の見積書は良い
見積書の施工内容の記載は、詳しいほどよいでしょう。もし見積書に書かれてある内容が解読できなかった場合、遠慮なく尋ねましょう。
シロアリ駆除では薬剤を散布することが基本ですが、その方法には、
- 液体の薬剤を木材やコンクリなどに吹き付ける
- 柱などの木材に細い穴を開けて薬剤を染み込ませる(穿孔(せんこう)工法)
- 液体の薬剤を土壌に染み込ませる
- 粒状の薬剤を土壌の上にまく
などがあります。
穿孔工法は効果が高いのですが、手間がかかる作業なので費用は高くなります。
見積書に駆除方法の名称と費用が書かれてあれば、家主はその工法を選択するかどうか考えることができます。
駆除方法の最終決定権が家主側にあることが分かる見積書は良い見積書といえます。
ベイト工法はシロアリ用の毒餌をプラスチック容器に入れ、住宅の周辺の土中に埋める方法です。
こちらも、埋める個数が多いほど効果は高まりますが、費用は個数に比例して高くなります。
- なぜこの個数が必要であると判断したのか
- どこに埋めるつもりなのか
- なぜその場所に必要であると考えたのか
ベイト工法ではこの3点を確認する必要があるのですが、もし見積書に「ベイト工法 1式 〇万円」としか書かれていなかったら、それがまったく分かりません。
正しい施工内容は多数決を取れば分かる
シロアリ駆除を業者に依頼するときに、必ず3~4社に声をかけ、見積書を取ってください。そうすることで、「うちの家に最も適した駆除方法(施工内容)」が分かります。
見積もり依頼をした3社のうち、2社がAという工法を選び、1社がBという工法を選択したとします。その場合、Aが正しい駆除方法である確率が高くなります。
もちろんBが正しい可能性も否定しきれないので、Bという工法を選んだ業者に「他の業者はAという工法を選択しましたが、なぜ御社はBを選んだのですか」と尋ねてください。
その理由が合理的であれば、A工法を提示した2社に、B工法で再見積もりしてもらえばいいのです。
施工内容を書かない業者は「わざと」書かない
見積書に施工内容(駆除方法)を書かない業者は、家主から細かい質問を受けるのが面倒なので「わざと」書かないのです。
そのため、超シンプルな見積書を出す業者は駄目業者と推測できるのです。
まとめ~「これ以上かかりませんね」と尋ねよう
シロアリ駆除でのクレームで多いのは、駆除を開始してから追加工事が必要であると言われ追加料金が取られることです。見積書をもらったら、「これ以上の費用はかかりませんね」と確認してください。
見積書を提出する前に、業者は床下を調査しているはずです。それにも関わらず追加工事が必要になったと言う業者は、きちんとした調査をしなかった証拠です。きちんとした調査をする能力がない、ともいえます。
よって駆除を始める前に「場合によっては追加工事が必要になるかもしれません」と予防線を張る業者も、見送ったほうがいいでしょう。